インフルエンサーマーケティングの予算配分において、多くの企業がフォロワー数100万人超の「大物インフルエンサー」1人に予算を集中させる傾向がある。しかし、同じ予算をフォロワー1,000〜10,000人規模の「ナノインフルエンサー」100人に分散させたほうが、ビジネス成果において優れた結果を生むケースが増えている。その理由をデータとともに解説する。
ナノインフルエンサーの最大の強みは、エンゲージメント率の高さにある。フォロワー数が100万人を超えるメガインフルエンサーのエンゲージメント率が平均1〜2%であるのに対し、ナノインフルエンサーのエンゲージメント率は5〜8%に達する。この差が生まれる理由は明確だ。ナノインフルエンサーのフォロワーは、そのクリエイターと日常的にコメントやDMでやり取りしている「濃いファン」で構成されており、投稿に対するリアクション率が本質的に高い。
具体的な数字で比較してみたい。予算100万円を使う場合を想定する。大物インフルエンサー1人に100万円を投じた場合、フォロワー100万人に対してエンゲージメント率1.5%で計算すると、獲得できるエンゲージメント数は約15,000件だ。一方、ナノインフルエンサー100人にそれぞれ1万円を投じた場合、各アカウントのフォロワー平均5,000人、エンゲージメント率6%で計算すると、1人あたり300エンゲージメント、100人合計で30,000エンゲージメントとなる。同じ予算で2倍のエンゲージメントを獲得できる計算だ。しかも大物1人のケースではリーチ先が1つのオーディエンスに限定されるのに対し、100人のナノインフルエンサーを起用すれば、それぞれ異なるコミュニティに分散してリーチできる。
あるペットフードブランドの事例がこの効果を如実に示している。同ブランドは新商品のローンチにあたり、当初はフォロワー80万人の有名ペットアカウント1名への依頼を検討していた。しかし戦略を転換し、フォロワー3,000〜8,000人のペット系ナノインフルエンサー80名に商品を提供し、レビュー投稿を依頼した。結果として、80名の投稿合計でのリーチは約45万人、エンゲージメントは約28,000件を記録した。さらに注目すべきは、各投稿のコメント欄に「どこで買えますか」「うちの子にも試してみたい」といった購買意向の高いコメントが多数ついた点だ。EC販売ページへのアクセスは施策開始後1か月で通常の3.8倍に増加し、コンバージョン率も1.2ポイント上昇した。
ナノインフルエンサー施策のもう1つの利点は、リスク分散である。大物1人に依頼する場合、その人物に不祥事が発生した際のブランドリスクは甚大だ。100人に分散していれば、1人に問題が生じてもブランド全体への影響は限定的である。また、100人が異なる表現で商品を紹介することにより、どのような訴求軸が消費者に最も響くかというクリエイティブインサイトも得られる。これは今後のマーケティング施策全体を最適化するための貴重なデータとなる。
もちろん、ナノインフルエンサー100人を管理する実務的な負荷は無視できない。選定、コンタクト、ブリーフ送付、納品物確認、報酬支払いと、1人あたりの工数は小さくても100人分となれば相応のリソースが必要になる。そこで有効なのが、インフルエンサーマッチングプラットフォームの活用だ。プラットフォームを通じて一括でリクルーティングし、コミュニケーションや進捗管理を効率化することで、社内の運用工数を大幅に削減できる。
ナノインフルエンサー100人施策は、手間はかかるが成果は確実に大きい。まずは20〜30人規模のテスト施策から始め、運用フローを確立した上でスケールさせていくアプローチが現実的だ。
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