ブランド動画の制作を外部のプロダクションに依頼すると、1本あたり数十万円から数百万円のコストが発生する。企画、撮影、編集、ディレクションと、各工程に専門スタッフが関わるため、当然の費用構造ではあるが、限られたマーケティング予算の中で動画コンテンツの量を確保するのは容易ではない。そこで注目されているのが、インフルエンサーのコンテンツ制作力を活用した動画制作アプローチだ。<
インフルエンサーは日常的にスマートフォンで高品質な動画を撮影・編集し、SNS上で発信している。彼らが持つ撮影スキル、編集テクニック、そして視聴者を引きつけるストーリーテリング能力は、プロの映像制作とは異なるベクトルながら、SNSマーケティングにおいては非常に高い効果を発揮する。プロが制作した洗練された映像よりも、インフルエンサーが自然体で撮影した動画のほうがSNS上でのエンゲージメントが高いというデータも多く報告されている。
インフルエンサーを動画制作パートナーとして活用する際に最も重要なのが、ブリーフ(制作指示書)の設計だ。効果的なブリーフには5つの要素を含める必要がある。第1に「ブランドメッセージの核」、つまりこの動画で最も伝えたいことを1文で明確にする。第2に「必須の訴求ポイント」で、商品の機能や特徴のうち必ず触れてほしい要素を3つ以内に絞る。第3に「NGワードおよびNG表現」として、競合ブランドへの言及や誇大表現など、避けるべき内容を具体的に列挙する。第4に「技術要件」で、動画の長さ、縦横比、解像度、テロップの有無といった仕様を明記する。第5に「トーンとマナーの参考例」として、理想に近い他の動画のURLを2〜3本共有する。
あるスキンケアブランドの事例を紹介したい。同ブランドはこれまで1本あたり約150万円をかけてプロダクションに商品紹介動画を発注していたが、インフルエンサー5名にそれぞれ動画制作を依頼する方式に切り替えた。1名あたりの報酬を15万円に設定し、5名で合計75万円。つまり従来の半額で5倍の動画本数を確保できた計算だ。さらに、5名がそれぞれ異なる切り口で商品を紹介したため、多様なターゲット層にリーチすることが可能になった。結果として、動画全体のリーチ数は従来のプロ制作動画の4倍を超え、ECサイトへの流入も大幅に増加した。
ここで見落としてはならないのが、二次利用権の確保である。インフルエンサーが制作した動画を、自社のSNSアカウントへの再投稿、ウェブ広告のクリエイティブ、ECサイトの商品ページへの掲載などに活用するためには、契約段階で二次利用の範囲と期間を明確に定めておく必要がある。一般的には、SNSへの再投稿権、広告利用権、ウェブサイト掲載権の3つをカバーする契約を結ぶことが推奨される。利用期間は6か月から1年が標準的で、この権利に対して通常の投稿報酬に加えて20〜50%程度の追加費用が発生するのが相場だ。
動画の品質を担保するためのフィードバックプロセスも設計しておきたい。初稿提出、フィードバック、修正版提出、最終確認という4段階のワークフローを事前に合意し、各段階の期限も明確にしておく。フィードバックの回数は原則2回までに限定し、それを超える修正が必要な場合は追加報酬が発生する旨も契約に含めるのが公平だ。
インフルエンサーの制作力を活用した動画制作は、コスト効率と量産性の両面で大きなメリットがある。ただし成功の鍵は、クリエイターの創造性を尊重しつつ、ブランドとして守るべきラインを明確にするブリーフ設計にある。この設計力を社内に蓄積していくことが、長期的な動画マーケティングの競争力につながる。
YS Media Agencyは、Gantaleプラットフォームを運営し、海外クリエイターと日本のブランドをつないでいます。




