2025年の大阪・関西万博で訪れたフランス館は、静かな感動がじわじわと広がるような展示空間でした。
建物は、建築家のコルデフィとカルロ・ラッティ・アソシエイトによる設計で、ぐるりと螺旋状のスロープを上がりながら展示を楽しめるつくり。
全体のテーマは「自分、他者、そして自然への愛」。
ちょっと哲学的ですが、肩肘張らずに体感できる構成になっています。


入口から少し進んだところ、早くも目を引くのが『もののけ姫』の世界を再現した巨大なタペストリー。
ジブリ作品がフランス館で?と思いましたが、森や精霊のモチーフがこのパビリオンの自然との共生というテーマにぴったり合っていて、日本文化へのリスペクトも感じられる展示でした。

その後に続くのは、ルイ・ヴィトンのトランクを使ったインスタレーションや、ディオールのドレス展示など、フランスを代表するブランドが登場するセクション。見た目の華やかさだけでなく、ブランドの哲学や美意識を感じさせるような演出がされていて、美術館を回っているような気分になります。



他には大型スクリーンにフランスの街並みとダンスパフォーマンスが映し出されている空間もあり、まるで映像の中に入り込んだような没入感。視覚と音が合わさって、空間そのものがアートになる演出です。

空間全体に漂う香りや、静かに流れる音楽も印象的で、視覚だけでなく五感で楽しめる設計。
どの展示も過剰な演出はなく、ゆったりとしたテンポで進んでいく不思議な時間が流れていました。


また、入り口近くにはベーカリーも併設されていましたが、今回は利用せず。
パビリオンの行列よりもベーカリーの列のほうが長いです。
全体としては、静かで上質、そして感性にじんわり染み込んでくるようなパビリオンでした。
アートや哲学、そして「美」の力で構成されたフランスらしい空間。派手さは控えめですが、そのぶん余韻が長く残る体験です。
万博会場の中でも、落ち着いた時間を過ごしたい方に特におすすめしたい場所でした。